相談員が受けた相談

お雑煮が食べたい

特別養護老人ホーム  女性  認知症なし  要介護度3

【相談内容】

 お正月は自宅にいた頃のように、お雑煮が食べたいな。
 無理なお願いだよね。

【相談員の対応】

 少量でもいいので、、のどにつまらないように、安心して食べられる工夫ができるといいですね。と事業所の職員さんに、相談・助言。

【施設の対応】

 イベントとして職員が利用者の前で餅つきをして楽しんでもらう事になり、種類もあんこ・きな粉・大根おろし・砂糖しょう油と選ぶことが出来、万が一のため、吸引器を用意されたそうです。

【相談員の感想】

 正月過ぎに訪問したとき、利用者さんから、「餅つきも見たし、寝たきりの人も私も食べられたよ。」と喜びの声がいただけ、嬉しく思いました。 
 本人はもちろん、ご家族の方も喜ばれたと思います。施設側の勇気ある対応と実行力に感激しました。他の施設は、どのような対応をとられているでしょうか?良い事例は情報提供等を行い広まっていけばといいと思いました。


解説・ポイント

 この事例の「お雑煮」は、多くのことを示唆していると考える。単に、食べ物の希望と受け取ることは早計であり、むしろ、象徴としてみた方がよいだろう。現在の社会では、お正月を迎えるにあたって餅つきをする家庭は減少し、化粧箱に入った鏡餅を購入する人が多いが、一年の節目としてのお正月と餅つき、雑煮は、いろいろな意味を持っている。
 施設の立場からすると、事故のことを考えると喉に詰まりやすい食事は避けたくなるだろう。嚥下機能が低下してきている場合はなおさらである。そこで、利用者の施設生活をどのように考えているのかの施設の理念と姿勢がとてもよく現れる場面でもある。施設介護の事情を知っていると、つい、「無理な希望・要望」としてしまいがちで、施設入所前のひとり一人の生活意識を大切にして「生活の継続」を施設の基本方針にして「何とかしてあげたい」と思っている施設であっても、とまどう問題の一つである。
 施設入所すると、それまでの生活から一変した生活環境と生活スタイルとなるため、生活意欲減退や不安など様々な問題が生じて、かえって利用者の自立性を損なうことにもなりかねないことがある。自宅にいたときでも外出が困難な利用者の場合であっても、季節の移り変わりを日々体感していたり、永年慣れ親しんだ季節の行事や旬の食材などをとおして、自分の現在と向き合っていたりする。自分が介護が必要となる以前の生活をただ懐かしむためだけでなく、これからの施設生活にどのように向き合っていくかということにも関わってくるものである。
 この事例の場合、介護相談員からの報告は施設の背中を押すきっかけとなったのではないだろうか。ひとりの利用者の希望をきっかけに、入居している利用者全員に関わることとした具体的な実現方法も、施設介護のあり方に示唆を与えるものである。「できない」ではなく、「どのようにすればよいか」という施設の姿勢は、この一件だけでなく、いろいろな場面でも利用者の充実した生活支援に向けて現れているだろうと推察できる。

更新:2015.11.10