利用者が風邪をひいて、夜間に失禁したので気持ちが悪いから、とブザーを押すと一度は「はい」と返事があったのだが、いくら待っても来てくれず、朝になってやっとおむつを変えてもらえた。いつもは夜中にはめったに出ないけれど、風邪で調子が悪く何度も出たのに変えてもらえなかった。自分でできればいいのだけど。情けない。と泣きながら言われた。
おむつ交換は時間が決まっているので、その他の時間は他にすることがあるので気付かなかったらしい。相談内容を責任者に伝えた。
レポート提出時、この事を伝えたが、あまりはっきりした返事がなかった。
おむつ交換の時間はある程度決まっているし、夜勤は人数が少ないのでベルが鳴っていても聞こえない事がある。これからは気をつけます。と言われた。
少し改善されたが、他の人からもまだまだ苦情がある様子でした。
別の日に行った時には他の部屋の人からも苦情があった。
介護度が高い人でも、私達のように外部の人が話に行くと、ふと正気に戻られる方もいます。誰も職員を困らせるつもりはないのです。誠意を持って介護に尽くしてほしいと考えています。
何のためのおむつ交換なのかということや、入居者の生活を支えるという基本が認識されていない施設に対してどのように関わっていくかということは、介護相談員個別の取り組みだけでなく、事務局や行政の姿勢のあり方が極めて大きな意味を持つ。介護サービス、施設サービスに対する前提の視点が欠けていると、その管内の介護サービス全体の水準の低下や利用者への権利擁護の取り組みも低下すると言っても過言ではない。
そもそも、おむつは着けっぱなしでよいというものではない。また、介護者の手間を省くためのものでもない。本来であれば、失禁しないようにトイレへ行けるようにすることが前提であって、トイレに間に合わなかったりして万一失禁したときに、少しでも不快感を減らすためにおむつを着用することであれば、利用者の生活を支える自立指向の介護サービスといえる。
したがって、おむつが濡れたりしたら、速やかにトイレに行って排泄確認をしたり、移動が困難な利用者の場合でも排泄確認の上、おむつなどの交換することが利用者にとって望ましい介護サービスといえる。
夜間においては濡れたままの状態であれば安眠できないし、安眠できなければ健康上の不調をきたすこともあり、日中活動への支障となることもある。そして、何よりも利用者の尊厳を損なうことを職員も施設もしっかりと認識しなければならない。不潔状態、不安状態を利用者に強いることはあってはならないことである。
このような不適切介護が通常行われているのであれば、他の場面においても職員の都合優先で、利用者の権利侵害などの行為が行われている可能性があると推察できるとして、行政は必要な措置をとることが求められる事例である。
介護相談員の連絡会や協議の場などでこの事例が示している問題の意味を共有することも必要であろう。