施設退所後の独居生活に不安を感じる
【相談内容】
施設退所後、家庭復帰した際の独居生活について。
10年来妻亡きあと一人暮らしをしていたが、腰椎骨折で入院、手術、リハビリと2つの病院で入院生活(約4カ月)後施設入所した。
退所が近くなり一人暮らしに戻るのが不安。リハビリの効果でよくなったが喜べないとのこと。
【相談員の対応】
利用者本人の意向を施設職員に相談。
2者会議のケース検討会議でも報告。
【施設の対応】
施設職員も案じており養護老人ホームか特別養護老人ホームあるいは有料経費老人ホーム等への移転入所を検討しているとのこと。
【事務局の対応】
ケース検討会議で検討。事業者の対応を経過観察する。
【改善状況】
他施設への移転入所の見込み。
【相談員の感想】
リハビリの効果が出て、家庭復帰が可能となって、喜ばしいことだが、地域なり、家庭環境の条件が整わなくて、身体の機能としては、一人暮らしが可能な状況に戻っても、家庭に戻れないのは極めて残念。
地域社会における居独世帯の支援体制の確立が必要。
解説・ポイント
利用者の思いを受けとめることは、介護相談員の活動にはとても重要であり、基本でもあるが、この事例で考えるポイントは2つある。1つは、施設が利用者の退所に向けてどのように対応してきたかということがある。老人保健施設の在所期間が長期化する傾向はあるが、本来は、在宅復帰を目指す役割を担っている。
病院での入院期間や年齢からも利用者本人は家庭復帰に不安があると理解しながらも、退所に向けての支援方針に基づいてすすめてきただろう。身体的介護の必要度が少なくなったとしても、利用者自身が在宅生活に対する不安を超える意欲を持たないまま退所をおしすすめることは、施設にとっても判断が難しいだろう。
しかし、利用者の不安に対して居宅サービスとの連携をすすめるなどの対応をとり、利用者に説明していくことは、施設の役割でもある。利用者に生活の目標と施設の動きが見えるように提案することも一つの方法である。
2つには、報告者の感想にもあるが、地域社会の支援体制の構築がある。居宅サービスとの連携を実際に進めていくためには、地域包括支援センターによるバックアップや地域ケア会議などをとおして、個別事例の対応にとどまらない地域全体の課題を検討する必要がある。
介護サービス事業者との懇談交流のなどの機会に、地域ケア体制を考える意識の醸成を図っていくことも大切だろう。そのためには、介護相談員が地域全体の介護サービス実施体制について理解を深めることが必要である。