「トイレに連れて行って」
【相談内容】
利用者が「トイレに連れて行って」と何度も連呼しているのに職員が気付いていないようだったので、職員に伝えたところ、「ちょっと待ってくださいね」と言ったまま、連れて行きませんでした。
【相談員の対応】
活動報告書に記入
「残存能力の活用」という点で、トイレ欲求に即、応じず職務優先は、利用者のあきらめる気持ちにつながると思い報告
【施設の対応】
次の訪問時、その利用者は職員そばのテーブルに移動されており、「トイレ連れて行って」という度に、トイレに連れて行っていた。相談員の目を気にしての行動だった様。
【事務局の対応】
活動報告の内容を上手に事業者へ伝えて下さった。
【改善状況】
その利用者は、他の利用者と離れて職員の側に移動されたままでした。訪問活動が「かいせん」のため中断となったので、その後は不明です。
【相談員の感想】
5分おきの頻度で声をあげており、実際はトイレでは無く、かまって欲しい等の不穏な気持ちの表現だったのでは、と後で気付きました。
職員が、私の目を気にして何度もトイレへ連れていかれるている事が申し訳なくなりました。
解説・ポイント
この事例をとおして、報告された介護サービス相談員は大切なことに気づくことができたようである。訪問活動での観察などで気をつけなければならないことは、その一場面だけを見て全体を判断しないことである。その場面の前後や時系列的に見ること、日常のその他の場面での利用者の行動や職員の対応などを見ることで、場面のとらえ方が大きく変わることがある。
この報告にある「トイレに連れて行って」という利用者のことばだけから考えても、いくつかの背景を想定できる。施設入所前の在宅生活で排泄の失敗があったことを強く咎められたりした経験があって、自衛的にあるいは強迫的にトイレへの介助欲求があるのかも知れない。それとも、報告者の介護サービス相談員の感想にあるように、トイレへの介助欲求を出せば職員が対応してくれるかも知れないと思っていることも考えられる。あるいは、外出要求などトイレとは関係ないことを求めているのかも知れない。
一場面だけを切り取ってしまうと、その要求の背景などが分からなくなったり、職員も形だけの対応になって背景を考えなくなってしまう恐れもある。それは、結果的に利用者にとっても施設にとっても良いことではない。
施設が利用者の行動の背景を考えて対応をすすめていくことができるように、介護サービス相談員は施設への指摘ではなく、施設が自らのサービスをふり返ることができるように提案するように心がけて欲しい。