両下肢の動きが悪く、車椅子を使用することになった。個人リハビリを希望しているが回数が少ないため、少し不満である。
リハビリ希望の利用者がおられることを連絡し、相談する。
かなり以前にリハビリを実施していたが、職員不足で中断していた。
体制が整ったため、再開できた。
再開後は週1回、利用者10名位で担当看護師指導により、30分程手足を動かしたり、ボールを使ったゲーム程度のリハビリを行っている。
参加されている他の利用者さんも「とても楽しい。」「他の階の方と顔見知りになり、後日会うと挨拶ができる。」などの言葉を頂き、いきいきされている様子に出会え、嬉しくなった。
多くの特別養護老人ホームは医療施設や老人保健施設とは異なり、医療としてのリハビリテーションを行う機会は少ないだろう。特別養護老人ホームでは身体機能回復としてのリハビリテーションよりも機能維持や機能低下の防止としての意味合いをもって行われている活動を行うことが多いので、施設サービスについての入居者の理解の状況などから不満に感じることもある。
この事例のような場合に留意して欲しい視点の第1点は、利用者はなぜ不満を持っているのか、どのような場面について不満を持っているかということから考えることである。一人ひとりに合った生活日課ではないために毎日の生活が単調になっていているのだろうか、利用者本人がリハビリテーションに対して思い込みがあるのか、行われている活動が自分の希望している内容と合わないのかなど、さまざまな背景について考えることが大切である。
第2点は、施設とケアスタッフは利用者の日中活動などをどのように考えているかという視点である。リハビリテーションやレクリエーションなどの活動について形式的にとらえているのか、それとも毎日の生活の活性化を考えているのか、一人ひとりの個別のプログラムを考えているのか、集団活動で対応しようとしているのかなど、施設の方針によって利用者の生活に影響を与えることに着眼することも大切である。
この事例では、フロアが異なっても心身機能レベルが同じような状態の利用者で行われているのか、人数を限定して行っているのか、入居している利用者全員が対象なのかが分からないが、少なくとも利用者の満足が得られていることで、利用者の不満の直接的な問題は解消されているように見えるが、施設のケアマネジメント担当者や生活指導員が日常的に利用者の日々の生活に目を向けられるように報告・提案したいものである。