ケアスタッフより利用者の状態は落ち着いたが、右足趾全体の皮膚トラブルにて訪問ドクターの指示で消毒処置を行っているが、処置の時利用者が痛がってかわいそう、と相談を受ける。
利用者の患部を見せて頂くと、かなり悪化しており、苦痛緩和や軽減を図った方が良いと思い、後日総合病院皮膚科フットケア専門外来の案内資料を持参し、施設長に説明をさせて頂き、ご家族・訪問診療の先生にも相談して検討されてはと提案する。
施設長より利用者の家族・先生に相談し、総合病院フットケア外来を受診するも、対応困難との事で、他の病院に紹介状を書いて頂き、家族ともよく相談して入院、足趾の手術をして経過もよく、3週間位で退院と言われたと報告がある。
退院後、利用者の状態も落ち着き、定期的に月1回、フットケア外来を受診されている。
ホームで入浴後足の処置も苦痛なくできている。
ご家族より元気に退院でき、またここで過ごせるようになり、本当に良かったと、感謝の言葉を頂きました、と施設長より報告がある。
ホームでの看取りを望んでおられても、特に痛みが伴う場合等、利用者の状態によっては治療して苦痛緩和を図ることが大切だと思った。
また、もう少し遅れていたら、大変な結果になっていたとも聞いた。
訪問時穏やかな表情で過ごされておられたので、あの時悩んだが、勇気を出して提案して良かったと思いました。
医療施設でない場合、医療を伴う対応が十分でないときがあるが、少なくとも、医療の必要性に対する認識が重要であることはいうまでもない。「看取り」を行うことを想定している場合はなおさらである。グループホームの場合は地域との密着性が施設の特徴であり、地域内との医療機関とどのように関わっているか、また、医療体制をどのように整えるかは大切なことである。
この事例の場合、介護相談員の行動によって医療処置が行われたが、問題を含んでいることに気がつかなければならない。大きな1点目は、介護相談員が医療に関して具体的な部分にまで介入していることである。自分の知識によって助言していると思われがちであるが、たとえ高度な医療知識を持っているとしても、患部を見て具体的な医療機関を紹介するのではなく、施設に対して、入居利用者の病状を的確に把握して今後の介護に必要な手立てを医師と相談することをすすめなければならない。施設が自ら介護サービスをふり返り、適切な対応をとれるようにすることが重要である。
2点目は、ケアスタッフから介護相談員が相談を受けていることである。訪問医から指示を受けて消毒を行っていても利用者がかわいそうとのことであるが、なぜ、ケアスタッフが直接訪問医に言えないのか、あるいは、施設長に進言できないのかということが大きな問題である。
1つの事例が改善されたということは大切なことであるが、そのことによって、本質を見間違えることになってはいけない。入居利用者の生活と医療に対する施設の姿勢を問い直すことにより、適切なケアへと方向付けられるようにすることを忘れてはならない。