自宅へ帰って暮らしたい

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80歳代女性 / 特養 (入所2か月)

【相談内容】

まわりにしっかりとした話のできる人がいなくて、一人でだまっていると眠ってしまう。夜が眠れなくて朝方まで起きていたりする。退屈で寂しい。リハビリもない。このままだと病気になりそうだ。2か月前のように一人暮らしをやる自信がある。娘に連絡してきてもらって施設側と話してほしい。自分としては今月中に出る決意だ。

【相談員の対応】

週に何度かデイ(1F)に行かれてはどうですか?とすすめてみたがどうしても「出たい」と言う。娘さん、施設側の了解を得て、段取りをしてからでないと勝手に出たり入ったりできないんですよ。と伝えた。

【施設の対応】

以前から本人がそう言っていることは知っています。だけど娘さんも身体が弱くて一人暮らしを始めると手がかかるから了解は難しいと思います。 一応話し合ってみます。

【改善状況】

その後、本人の希望を受け入れる形で、体験的にヘルパーさん等の支援を入れて、1週間の一人暮らしをしてもらった。
思ったよりスムーズにいき、大丈夫だという事になり、以前の形で一人暮らしを開始した。
娘さんも納得している。本人が元気に喜んでいるとのこと。

【相談員の感想】

最初は認知症の方の「わがまま」ではないだろうか、とも考えたが、話しているうちに思いつめた様子を感じた。訪問終了後に施設側にその旨を伝えると「本人からたびたび聞いて知っていますが…」と前置きされて、ご家族の状況が厳しいとのことをいろいろ聞かされた。「とにかく娘さんに連絡をとって、一度しっかり本人の気持ちを聞いて下さい」とお願いした。
次に訪問したら、本人の希望通りになっていて利用者の訴えに真剣に耳を傾ける事が大切だと痛感した。

解説・ポイント

誰のための、何のための施設入所かを問い直すことになったことは、とても重要なことである。施設入所が、家族の立場や「専門家」の視点からすすめられやすいことは枚挙にいとまがないが、利用者本人にとっての介護サービスの意味を考えることが市民生活を支えることの基本である。利用者本人や家族の意向とは関係なく、居宅介護サービスの関係者たちが「このままだと共倒れになる」などと気を回しすぎて、かえって利用者本人や家族の意向と異なる対応を進めてしまうことがある。

この事例の場合、入所にあたって施設が誰の意向を聞いていたのか、利用者本人や家族の意向をきちんと受けとめていたのかということに疑問が生じるが、居宅介護サービス関係者の視点と姿勢も問われなければならないだろう。

施設入所して不安のうちに1か月が過ぎ、何とか施設生活に適応しようとしたりする2か月が過ぎ、3か月もたつ頃になり、利用者がいない生活に家族が慣れてしまうと、なかなか再構築できなくなってしまうこともあるので、施設入所の基本を問い直すことが大切である。

利用者本人の訴えに対して、予断や先入観を持たずに聴くことは重要であるが、なかなか実行が難しい。そのことを考えると、代弁することの意味をしっかりと理解し行動できるようにすることを心がけているのは評価できる

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