全盲なので時間を知りたいときは、同室の人に聞くしかない。他人の迷惑にならないように、自分で時間がわかる時計があればいいのにと思う。
要望を施設側に伝え、相談員自身でも視覚障害者用の時計の資料を探した。
1カ月後には、相談者の要望に合った視覚障害者のための時計が準備された。
視覚障害者のための時計は、身体障害者福祉の制度で対応することになった。
デイサービスを利用している視覚障害者も使うことができるようになった。
施設職員は「そのようなことで困っていることをまったく知らなかった」と驚いていた。相談者は時計の入っているエプロンのポケットを押さえて、「時間がわかるようになってうれしい」と喜んでいる姿を見て、この仕事のやりがいを感じた。
日本では、視覚障害者や聴覚障害者が日常生活でどのような困難や不便を感じているかについて、まだまだ理解が遅れている。そうした状況をふまえて、職員も「まったく知らなかった」という相談者の不便さについて、相談員が気づいたことは大いに評価したい。
また、障害者担当の部署との連携を円滑に行い、身体障害者福祉制度を活用して、視覚障害者用の時計を用意した事務局の対応も評価できる。