いまの自分を人にみられるのがいやだから、外部の人と交流する外出や行事には、一切参加したくない。離婚した妻や別れた娘、むかしの友人もいまの自分のことは知らない。死ぬまで会うつもりはない。
年齢も若く、話が好きな元気な人だったので、施設の行事に参加してみてはどうかと話をしたところ、このように答えた。とても頑なな態度だったので、利用者の気持ちを施設へ伝える。
利用者の本音がいままで聞けずに困っていた。利用者の気持ちがわかり、これからの対応の参考になる。
介護が必要になり意図しない施設入居という自分の現状を受け入れられないでいる利用者はたくさんいる。介護が必要となる前の生活を意識すればするほど、現状を拒否したくなる気持ちが強まる。その場合、施設のサービスに対して頑なになったり、人との交流を拒否したり、現状を認めない行動をする。そのため、施設にとって「やっかいな人」になりがちだ。
相談員に話をしたことは、利用者自身の気持ちに変化が生じている予兆だ。しかし、利用者と施設の関係が変わるまでには時間がかかる。相談員だから利用者が口を開いたと考えられるので、今後も機会をみつけては話しかけることが大切である。
相談員とのかかわりが、利用者が現状を受け止め、サービスを利用して生活を営むという気持ちになるきっかけとなるだろう。相談員活動の重要性はこういったところにあるという一例だ。