退所させてほしい利用者がいる。夜中に部屋に入ってきて杖で殴るし、昼間は廊下を歩いていると腕を引っかいていじめるので恐ろしくてしかたがない。自分が退所できればいいが、できない事情がある。
悪意があるのではなく、認知症があるために部屋をまちがえて入ってしまった時の事件だ。その後、利用者の部屋替えをしたので、事件は起きていない。
相談者の恐怖心はなくなっていない。いまも昼間にいじめられていると話している。
相談員は、利用者の一般的状況を理解しなければならない。どのような状態の人が施設を利用しているのか、認知症がある人の行動特徴など理解がないと、相談があったときや相談員が「観察」するとき、予断や偏見をもってしまい、的確な対応がとれなくなる。
利用者の状況は一人ひとり異なる。そのため、相談員が利用者から話を聞くときは、「あなたはなぜいじめられていると思うのか」など、利用者の理解や受け止め方などを確認する質問をして、利用者への理解を深めよう。
この事例では、サービス事業者の対応はその時点でよい方法を選んだが、職員はその後の一人ひとりの状況を把握し対応しておかねばならないが、そこまでできていないためにおきている事例である。