第一声は両手を合わせて、「お助けください、お願いします」。泣き声で「からだが動かなくなっちゃった。おしりが痛い。痛いところがないようにお願いします」の連続だった。
施設の相談員にありのままを伝える。施設の職員によると、入所したばかりで、精神的に不安定で動いていないと気がすまない状態であることがわかった。
とても不安定な状態なので、家族と相談して、息子に毎日時間を決めて訪問してもらうことにした。しかし、息子がいる間は落ち着いているが、帰ると再び不安定になる。しばらく様子を見守るとのこと。
かなり落ち着き、表情も明るくなり、「お助けください」の訴えもほとんどなくなった。その後も訪問するたび、車いすを押している息子の姿を目にする。
施設と家族が相談し、連携しながら利用者を支えることによって、快方に向かう姿に接し、うれしく思う。入所しても家族の理解と協力が大切であると感じた。
入所したばかりの利用者の精神的な安定をはかることは、施設にとっても重要なことである。しかし、実際は日常の忙しさにかまけて、入所後のきめ細やかな経過観察をしていない場合が多い。
この事例でも、相談員から報告を受けて、はじめて利用者の不安な気持ちを知らされたというのが実態だろう。 相談員は、職員が気づかなかった利用者の不安を的確に把握している。また、利用者の状況を見て、相談員の立場をこえた施設と家族での対応が重要と判断し、施設にありのままを伝えたことも評価できる点である。