食事がまずい。たまに食べる人は、まだ耐えられるかもしれないが、毎日3食食べている私たちの身になってほしい。
数カ月間、食事の内容や利用者の食事の様子を観察し、介護サービス相談員自身も試食してみた。はっきり言っておいしくないので、文書で利用者の苦情を報告する。
事務長は、残飯が多いことに疑問を抱いていたとのことで、利用者一人ひとりにアンケートをとった。翌月、その集計結果をもとに、栄養士を交えて、施設内の給食委員会で改善していくとの回答があった。
施設開設当初から給食委託業者が8年間も変わっておらず、入札に関して問題もあるようなので、事務局から直接施設へ話をしてもよいとのことだったが、しばらく様子をみることになった。
2回目のアンケートもとったようだが、味のほうはほとんど改善されていない。
施設は、「おいしいまずいは、あくまで個人の好みの問題」と言い切っている。「職員も食べているが、他の施設とさほど変わらない味だと思っている。一部の人の意見を全体の意見としてとらえてもらっては困る」と言われた。しかし、アンケートでも100人中25人くらいがはっきり「まずい」と答えている。
介護サービス相談員がかかわったことにより、施設側が気づかなかった問題を提起したという点では、よい事例である。 しかし、事務長や栄養士など、現場のスタッフが前向きに取り組もうとしているにもかかわらず、実施したアンケート調査の成果が表れないのは気になるところだ。
「おいしいまずいは、あくまで個人の好みの問題」と言い切るところに、この施設の組織的な問題点がある。理事長あるいは施設長レベルが決定権をもつ給食委託業者の質の問題が背景にあるのかもしれない。このような施設には、行政がきちんと対応していく必要がある。
例えば監査などで、特定の給食委託業者との随意契約が行われていないか、指定業者から相見積をとっているかなどについて、意識的にチェックを行わない限り改善は難しいかもしれない。
そういう意味で介護サービス相談員の役割を超えてきており、今後は行政が対応すべき問題といえるだろう。