朝は食欲がなく、ご飯が食べられないし、みそ汁もあまり好きではない。
家ではパンとコーヒーの朝食だったので、できればパン食にしてほしい。
文書と口頭で担当者に報告。
相談者はご飯からパンに変更できないと思いこんでいたようで、いつでもパン(洋食)に変更できることを連絡した。
翌日の朝食からパン食に変更し、おかわりをしたいほど食欲が出てきたようだ。
(1) 日本人の朝食の基本はご飯とみそ汁だと思い込んでいる人が少なくない。しかし実際は、高齢者でもパンとコーヒーという人が以外に多い。したがって、施設も相談員も「高齢者は和食が好き」といった既成概念で利用者の嗜好を一律にとらえないよう心がけることが大切である。
施設としては、入所時に、まず、その人が在宅のときどのような生活を送っていたかを、健康状態だけでなく、食事などの嗜好も含めて把握することが重要である。そのためには当然、居宅のケアマネジャーからの情報の引き継ぎも不可欠となる。
(2) いちばんのポイントは、施設側が利用者に対して的確な情報提供(いつでもパン食に変更できる)を行っていたかどうかだが、これについては、おもに以下の2つのケースが考えられる。
1. 施設が「利用者は認知症だから、説明しても理解してもらえない」などの理由で情報を伝えていない。
2. 施設が情報を伝えたにもかかわらず、利用者が理解していない(認知症でなくても、高齢者は、ひとつの思いこみをするとなかなか別の考え方を受けつけない傾向がある。
したがって相談員としては、まず、利用者が「パン食に変更できない」と思いこんでいたのは、なにが原因かを確認する作業が必要となる。この事例では、施設からの情報が利用者にきちんと伝わっていなかったと思われるが、いずれにせよ、そこに相談員がかかわることで、あらためて利用者に対して必要な情報を伝えたという意味で、相談員の役割が果たされたといえる。