Y字拘束帯を着用しての車いす生活だが、拘束帯を着用していると、
1.用便のたびに職員を呼ばなければならないのでわずらわしい
2.歩行能力が低下するのではないかと不安
などの理由から杖歩行を望んでいる。
訪問当初、この施設では、車いす使用時に安全面を最優先すると称して、Y字型拘束帯や腰ベルトを着用させていた。この相談を機に、拘束帯の廃止を検討すること、相談者の要望を受け入れることをお願いする。
医師(施設長兼務)と相談のうえ、本人の要望を受け入れ、日常生活は杖歩行となった。
今回、相談者の要望を受け入れて以降、車いす使用時のY字型拘束帯着用は徐々に減り、約1年後には皆無となった。
この施設では、「車いす着用時に安全面を最優先する」ことを理由に、Y字型拘束帯や腰ベルトを着用させているが、利用者の活動の自由を奪うことによって得られる安全は、本当の安全とはいえない。
拘束は、利用者に身体的な機能の低下をもたらすだけでなく、精神的苦痛を与えるばかりか、人間としての尊厳をも冒す行為である。
施設のいう「安全」とは、あくまで施設側にとっての安全(リスク回避)であり、利用者の安全とは程遠いものであることを忘れてはならない。
施設は、こうした拘束による表面的な「安全」ではなく、利用者の活動の自由を保障したうえで、どうしたら利用者の安全を確保できるかを考え、介護サービスのあり方の基本をもう一度見直す必要がある。
この事例では、今回のことをきっかけに施設が改善を進めていったこと、そして、そこに相談員が介在したことに大きな意義があるといえよう。
ここで確認しておかなければならないことは、身体拘束廃止が目標ではないということである。
つまり、1年後には拘束が皆無になったということは、画一的なケアから個別ケアへと改善が図られたことにある。