まわりが認知症の人ばかりで、話し相手もなく、一日が長い。
相談者には、施設と相談し、地域関係者にもお願いして、できるだけ話し相手をしてもらえる人を探してみると伝えた。また、施設には地域のボランティアセンターに頼んで話し相手を派遣してもらってはどうかと提案した。
地域のボランティアセンターに派遣依頼をした。
地域ボランティアのなかで、2~3人ずつの施設ボランティアグループをつくり、週2回、当番制で施設訪問が実現した。施設も相談コーナーを新設し、相談者もお茶を飲みながら、会話を楽しむ時間が多くなった。
相談員も地域ボランティアにかかわりがあったため、スムーズに事が進んだ。ほかの施設でも同様の要望が出ることがあり、この施設の例をあげ、施設との地域の連携をはかっていきたい。
この事例でもっとも評価したいのは、相談員の役割と、いわゆる「傾聴ボランティア」の役割の違いについて、相談員が明確に認識し、区別している点である。施設もその違いを理解していることがわかる。
この相談員の対応そのものが、まさに相談員と傾聴ボランティアとの理想的な役割分担のあり方を示している。地域との連携を他の施設にも広げようとしている、相談員の感想も含めて素晴らしい事例である。
相談員の活動は傾聴ボランティアと同じではないかと、悩んでいる相談員は思いのほか多い。この事例でも明らかなように、傾聴ボランティアの役割は、利用者の話をひたすら聴き、心にやすらぎをもたらすことである。それに対して、相談員の役割は、利用者の話を聴き、心にやすらぎをもたらすことはもちろんのこと、そこをスタートとして、利用者の話の内容から、介護サービスの改善や環境の改善などにつなげていくことにある。相談員の方々には、あらためてこの2つの役割の違いを再認識してほしい。