2人部屋。常時寝たきりの状態。話しかけても反応なし。食事もとれないので、経管で摂取しているという。3回目の訪問時にそばを離れようとすると目で追う様子がみられた。
日中もほとんど刺激がないようなので、介護主任との面談時にその時の様子を話し、「わかってもわからなくても日中はホールに出て、みんなと一緒に過ごすようにしてみては?」と提案する。
担当職員と話し合って、やってみる。
月1回の訪問のたびに、利用者に変化があらわれてきているという話を聞いた。職員のさまざまな働きかけが増えていることもうかがえる。利用者の居室を訪問すると、発語はないが、反応がはっきりしてきた。口から食べることも、少しできるようになったとのこと。
この相談員は、利用者がどんな生活をしているか、どんな思いをしているかを常に把握しようとしていることがうかがえる。その姿勢のあらわれが「3回目の訪問時にそばを離れようとすると目で追う様子がみられた」という観察にも示されており、高く評価してよい。
しかも、単なる感情や感覚に流されることなく、その気づきを的確に施設に伝えている。
その結果、施設が自分たちのやり方や介護のあり方を振り返るきっかけにもなり、まさに相談員の観察の意義がここにあらわされているといえよう。