新鮮な生野菜を食べたい。トマトやきゅうりを生で食べたい。
田舎にいた頃、生でかじって食べていたトマトやきゅうりの味が忘れられないという話に耳を傾け、施設に要望を伝える。
食あたり予防のため、きゅうりなども火を通している。
施設の菜園でミニトマトを栽培して、利用者自身が収穫し、新鮮なものを食べていた
一般の家庭生活では当たり前のことが、施設ではむずかしいこともあるのだと感じた。
一般的に施設が提供する食事は、手間のかからない煮物などが多くなる傾向がある。しかし、食事には栄養の摂取だけでなく、旬の味覚や食感を味わうという「楽しみ」の側面がある。生で食べたほうがおいしいものは、「生のまま食べたい」という要望が出るのは当然ともいえる。
この事例では、相談員がかかわったことにより、施設側はいたいところをつかれたという部分があるようだ。「施設の菜園でミニトマトを栽培」したという改善策をみても、相談員が利用者の要望をうまく橋渡しして、施設側へのアドバイスも的確だったと思われる。
最大のポイントは、「生野菜を食べたい」という要望から、「利用者自身が施設での生活をどう楽しむか」(菜園で野菜の栽培を楽しむ)という方向につながっていった点にある。入り口は単なる食事の問題であっても、それが楽しみや生きがいを考えるきっかけになり思わぬ効果を生む、ということを教えてくれる事例である