食薬分離のご提案
【相談内容】
職員が食事に薬を混ぜて口へ運んでいた。
口から食品が漏れ、処方薬全量が服用されたとは限らない状況であった。
【相談員の対応】
訪問時、この施設に訪問している全ての相談員が、食事介助時に食事に薬を混ぜていないかについて数か月にわたり観察する。
食事の味が悪くなる可能性・必要量の薬が体内に入らないことが生じる可能性を感じるため、事務局とも合意の上、事業者へ伝える。
【施設の対応】
介助スプーンの変更
食事と薬を分ける事に施設全体において変更
事業所だよりに苦情相談扱いで改善のため掲載された
【改善状況】
食事介助のとき、食事に薬を混ぜることはなくなった。
【相談員の感想】
医療介助と介護の介助は違う。かつての看護時には行われていたことなどを知り合いの専門職に伺い、知識面で自信を持てた時点で事業者と面談をした。
食事に薬を混ぜて利用者へ与えているケア職員はわずか数名であろうと全体の問題としてみる重要性を感じた。
大規模事業所で職員も利用者も多いため、相談員間で連携をとりながら、事実を冷静に観察するためには長い時間を要した。
解説・ポイント
食事の時に食べ物に薬を混ぜるということが依然として行われていたことは問題であるが、訪問する介護相談員が全員一致して継続して実態把握したことは活動のよい例となった。
食事に薬を混ぜることについて多く見られる理由は、利用者が服薬を拒否するから、各日に服薬させるためなどがあるが、それらの理由は、利用者本人のためといいながらケアスタッフの都合そのものに他ならない。服薬を拒否するのであれば、薬の処方について医師と相談したり、薬剤師に相談したりすることに留意して欲しいが、利用者に服薬の必要性を理解してもらえるようにすることが基本ではないだろうか。利用者の立場にたって服薬の方法等を検討することは、薬効も含めて、利用者本人だけのためになるのではなく、施設における介護サービス全体に大きな影響を与えるものである。
日常的に医療が必要である利用者が多いことを考えるならば、あらためて服薬管理なども含めてサービスのあり方を具体的な方法もあわせて考えなければならない。
この事例は、介護相談員が観察したことを基に、介護相談員全体と事務局が継続観察した結果が功を奏しているが、ケアスタッフの個別的問題なのか、施設全体の問題なのかという視点だけでなく、個別の問題であっても施設全体の問題としてとらえる視点で活動したことが重要である。組織の傾向として、何かの問題が発覚したりするとケアスタッフ個人の問題として処理されがちになるが、施設にも全体の問題として認識させる地道な取り組みを評価したい。