オムツにそのまま便をして下さいと言われたが…
【相談内容】
便意を職員に訴えたところ、「オムツがしてあるので、そのままオムツにして下さい」と言われたが、なかなか用がたせず苦しい。
【相談員の対応】
担当職員に利用者の訴えを伝えたところ、「主治医からの指示です。」と言われたため、事業所の責任者へ報告する。
【施設の対応】
「職員に確かめ対応します。」と回答あり。
原則的には尿意・便意のある人には自立排泄を介助しているとのこと。
【改善状況】
その後、トイレに連れて行ってもらわれているのを見かけるようになった。
【相談員の感想】
背もたれのついた車椅子を利用されていたので、座位を保つのが困難なためかなと思ったが、改善されたということは、何か工夫をされたのだろうか?
利用者の希望が適ったのは良かったですが、その間の経過報告があれば良かったと思った。
解説・ポイント
排泄に関する問題は、今までずいぶん取りざたされてきたにも関わらず、依然として多い。利用者の身体状況にもよると言われるが、差込式便器などで対応できる場合でも、介助の手間がかかるなどの理由から安易におむつを強要したりすることが、利用者の尊厳と人権を侵害していることをしっかり認識しなければならない。場合によっては、虐待として取りあげなければならないこともある。トイレでの排泄へ移動できないとなると、安易にポータブルトイレ使用を要請したり、座位での姿勢保持が困難だとなると、差込式便器ではなくおむつを要請することは、介護の基本理念を理解している施設とはいえないという疑念を抱かざるを得ない。
排泄の際に介助されることでさえ躊躇いがあるのに、利用者の誇りを奪うことは決して許されることではない。
この事例の場合、「主治医からの指示」と言っているが、「疾患だけを診てその人を見ていない」のではないか、あるいは介護・看護スタッフから的確な情報が主治医に届いていないのではないか、あるいはスタッフが指示を誤解していたのではないかなどの疑念が残る。また、介護相談員からの報告によりトイレへ移動しての排泄が行われるようになったとのことは、そもそもおむつ使用が適切であったのかということになる。介護老人保健施設であるならば利用者の心身機能や行動の回復・改善を基本に業務がすすめられるはずだから、日常の介護などの中にいろいろな問題が潜んでいることも懸念されるので、施設の管理運営体制を含めて点検が必要であろう。
介護相談員からの報告で利用者の尊厳を保つ一歩となったことは大きな意義があるが、この施設の一事例として終わらせるのではなく、保険者が常に認識していくよう、組織的に検討することも大切である。