息子の結婚式に出席させたい
【相談内容】
入居者(夫)を息子の結婚式に出席させたいが、ホーム長より「今は、入居者(夫)の病状が悪いので、出席は危険です。」と言われたのに立腹。
その件でご家族より電話相談あり。
【相談員の対応】
まず、ホームへ行って、入居者の状況を知ることにして、電話での件をホーム長に話す。
入居者の状態はターミナルケア中で衰弱状態。主治医の許可はあっているようだった。
【施設の対応】
家族から電話連絡があったことを伝えると、ホーム長はじめケアマネージャー共に自分たちの心配が家族に十分に伝わっていないことを反省された。
家族が面会をしばらくされていないので、入居者(夫)の状況が悪化している事の認識がなかった。
【改善状況】
すぐに面会に来られた結果、ホーム長の指示が夫の為であることを理解され、納得されたようで、その日に和解が出来た。
その後、結婚式当日ホームに花嫁さんと一緒に来られて、記念写真を撮り、喜ばれていたとの事。
【相談員の感想】
入居者(利用者)の家族さんと和解し、今まで以上に信頼関係ができたと双方から意見が聞けて良かった。
ホーム側の入居者想いは理解できるが、家族への伝え方には十分配慮が必要だと思った。
良い事でもそれが伝わらなければ悪い方向に行くことを知った。
解説・ポイント
ホーム長やケアマネジャーの心配(意向)を適確に伝えていなかったということだが、この事例にはいくつかの課題が潜んでいる。
1つ目は、専門職といわれる人々が陥りやすい発想が潜んでいることがある。心身の状況や日頃の生活についてみるとき、家族よりも専門的な知識や技術があるので、適切な判断ができるという思い込みである。自分たちの考えを理解させようとする発想は、そのような思い込みから生じやすい。家族がどのような思いで希望を出しているのか、入居者本人と家族の結びつきをどのように理解しているのかを受けとめ、求めていることの「本質」を見つけ、どのような方法をとれば希望が実現できるだろうかと考えることが専門職の視点として大切である。
2つ目は、家族の面会がしばらくされていないから入居者本人の状況を家族が知らないとしていることである。家族が面会に来ないことが問題のようなとらえ方になりやすいが、施設が家族に対して本人に関する情報(身体的、精神的な状況にとどまらず、生活の中であったよいお知らせなども含め)を適切に適宜伝えていなかったことにある。ターミナルケアということであれば、なおさらのことである。施設の入居者本人に対する支援方針はどうであったのか、家族の事情を理解しつつ家族にしかできないこと、施設が担当することを明確にしていたかが問われるだろう。
この事例の場合、結果としては円満に終わったが、「家族が理解したから」という視点でホームがとらえてしまうと、入居者本人や家族の思いをくみ取ることに齟齬が生じてしまうだろう。また、施設の都合だけで家族を補助者や第三者のようにあつかうことになり、家族自身による家族の再構築に支障が生じることにもなることに気をつけなければならない。