4本柵ベッド、拘束着、ミトン使用するも職員は何の疑問も感じていない
【相談内容】
・訪問活動時、4点柵のベッドに拘束着を着用している利用者を見た。
・他の部屋にも、ミトンを両手につけている利用者が居た。
施設が病院と接続しており、利用者数も多く、複数の階で確認をしたところ、数名の利用者が拘束されていた。
【相談員の対応】
相談員4名全員で施設内すべての利用者の状況を見て回った。
【施設の対応】
病院から着用されていたままを、そのままで受け入れ、以後、その状態のままでした。
【事務局の対応】
詳細を報告書に記し、報告した。 (事務局担当者、認知症コーディネーター)
【改善状況】
・拘束着をやめ、利用者の状況にあった対応をされた。
・4点柵を外し、床にマット(センサー付き)を一時的使用等して対処。
・ベッド使用をやめ、たたみを利用など工夫を実施されたりした結果施設内職員の取り組みもかわり、すべて改善された。
【相談員の感想】
母体が病院だった点と看護職員が多かったなど、病院で受けた状態を疑問に感じなかった点を施設側が反省された。相談員としての気づきが良い結果を生んで嬉しかった。
解説・ポイント
医療機関では治療上の効果を意識して患者の行動制限を行うことは現在でもあるが、医療系施設とはいえ、医療機関とは同列に考えることはできない。老人保健施設と医療機関の役割、援助内容は異なるからである。
老人保健施設の入所者の現状は長期化の傾向にあるといわれるが、施設でのサービス内容は家庭復帰などを意図して提供されるものであり、利用者の生活改善に資する援助が求められる。
利用者の安全の確保などに注意が向くのは当然であるが、行動制限は利用者の権利侵害という視点だけでなく、却って自立した生活の実現を阻害する行為でもあるということも理解して欲しい。
この事例では、施設全体が医療上必要な行為として理解していた可能性があるが、事務局への報告が適切であったと推察でき、また、そこから適切な指導に結びついていったと思われる。
施設での状況を、訪問した介護相談員全員で意思統一して確認するなど、身体拘束に関する観察をもれなく実行したことなどは、適切であった。
身体拘束などは、ややもすればそれぞれの利用者の特性に帰することとして「例外適用」にされがちなことを、施設全体を把握することにより、施設の課題として見て、必要な報告を行っている。
施設も漫然と利用者を療護するのではなく、施設の目的に沿って利用者の状況に応じた対応を実行したことは、「サービスの目的は何か」という視点に立って介護相談員の問題提起を受けとめたと見ることができる。