ご飯が美味しくない
【相談内容】
塩気が無いしご飯が不味い、前の調理師の時は美味しかったけど…
調理師も何度も来てくれて、話をしたが、あの人にどうこう言ってもダメやし、諦めないといけないかなぁ~、ふりかけや海苔で誤魔化して食べるしかない。
【相談員の対応】
相談者は減塩調理でなければいけないことを踏まえて、施設に試食させて頂くことをお願いし、試食したところ、しっかりとした味付けであった。これ以上味を濃くするのはかえっていけないのではないかと感じた。
【施設の対応】
話し合いの結果、今の内容でいいのではとのことで、利用者にはご理解と説得をして頂くことになった。
【改善状況】
試食後、利用者の思い込み(嗜好による)と判明したため、その辺を利用者へフォローしていくこととした。
【相談員の感想】
利用者はかなり濃い味が好きだったようで、そのことを否定せずに関わっていこうと相談員同士で意見が一致した。
その後、利用者には「お身体のためにはこのあたりで」と説得した。施設の関わり合いもあって、納得されたようでした。
相談者のお話のお聞きするのではなく、スタッフとの話し合いも必要性であることを感じた。
解説・ポイント
食事の「おいしさ」は味覚、視覚、触覚など五感に大きく左右されるうえ、健康状態、日々の生活や活動内容、活動量などにも関係している。健康的な一般成人であれば、活動量が多ければ食欲もすすんだり、塩分も多めに摂ることもあるが、施設の生活では活動量が減り、健康管理ということで塩分控えめの食事になることが多い。日本人の食塩摂取はまだまだ多く、醤油や味噌など毎日のように摂る調味料だけでなく、麺類や鍋物などのスープはかなりの塩分があり、自分では塩分制限しているつもりでも、実際は多いといわれている。特に、味付けは地域性、生活史にも大きく関係しており、個人差が著しいものである。現在は、国立循環器病研究センターがおいしい減塩入院食のレシピを出版し、企業も協力してプロジェクトを進めるなどしているが、施設入居前の長い人生の習慣はなかなか変えることはできないもので、栄養士や調理師にとっても工夫を必要としている課題の一つである。
この事例について考えると、利用者の要望に対して介護相談員が試食などもして実態を把握しようとしたことについては一定の評価ができるが、いくつか気をつけなければならないことがある。第1点は、利用者が求めていることは何かということを考える姿勢である。食事の味付けだけの問題なのか、それとも、そのことを題材にして他のことを訴えたいのか、まず考えることが大切である。前述した食事の「おいしさ」についても広い、総合的な視点で考えることが大切である。利用者が食事に関して不満があること、その不満に対して対応しているのが調理師であるということを踏まえなければならない。
第2点は、介護相談員は何を判断するのかということである。利用者の要望を代弁することは右から左へとそのまま話すのではないが、介護相談員が自分の狭い判断で結論を導くようにすることでもない。利用者の立場に立って事業者が自己点検できるようにすることを考えなければならない。「減塩食が当然」という考えで接するのではなく、減塩食の必要性を利用者本人が理解し、納得できるようになるためにはどのように対応すればよいかを、調理師や栄養士だけでなく、介護職員や嘱託医、生活相談員、介護支援専門員など、施設が組織的に検討しなければならないことについて、目を向けさせることが必要である。介護相談員は施設の代弁者として(代弁者のように)利用者を説得するのではないことを忘れてはならない。