意思疎通ができずいらだっている
男性 / 聾唖 / 認知症症状あり / 特養(入所して2年)
【相談内容】
【相談員の観察より】
手話ができる人がいないので、意思疎通ができず、大声をあげたり、暴力をふるったりするため、終日、廊下にある談話スペースに寝かされている。
【相談員の対応】
手話ができないので、利用者が手話で一方的に話す。手のしぐさをみて理解できるときはうなずいたり、我流の手話で答えたりすると喜ぶ。何か対応策はないだろうか。
【施設の対応】
ほかの利用者と一緒にすると、大声で皆が怯えるし、手を出すので危険。聾唖の人の施設がないので、いまのところ対応策がない。
解説・ポイント
「話」を傾聴してくれる相談員の訪問は、この利用者にとってもっとも安らぐ、安心できるひとときではないだろうか。
聴覚障害者で自分の意思を伝える手段が限られていると、ほかの人と話をしたいのに話せないジレンマにおそわれる。そこで、言葉にはならない声を出したり、手話や身振りを相手に示し、さらには相手の意思に反した無理な行動で意思を伝えようとするが、結果は周囲の理解は得られずに恐れられ、敬遠され、ますます悪循環に陥る。
このような利用者には、落ち着いて、時間をかけて接することが必要だ。しかし、利用者の特性を職員が理解していなければ、「問題行動のある人」となる。心身の状況に適した場で、障害の専門知識をもった職員が関わることができればよいが、そのよう施設や人材の配置はまだ十分ではない。